夏の囚われ人/ただのみきや
 
ドを囲む高いネットで
雀たちが戯れる
素早く下りてまた上りあの風の
端っこに わたしは触れるだけ





一度が全て

顔は来客用のお皿
心は焦げ付いたフライパン
視線は迷い込んだ蜂
薄緑のカーテンに浮かんだ
風の模様に縋りつく

折り畳んだまま
長らく重石を乗せていた
悲しみも熟成してしっとり
匂うだけ 言葉はない
――思う壺
だが いったい誰の?

ある日のキス
幼児が頬を食むような
無垢すぎて
容易(たやす)く芯まで深くなる
一瞬が永遠であるように
それが一生だった

身を巻き寄せて花ひらく
朝顔の性 だが
萎んだ内にひらいた夢
原型を慕い絡まる蔓の 文脈は
答えのない謎々を含むのか
隠喩的な仕草で



              《2020年8月9日》









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