夏の囚われ人/ただのみきや
蝶の行方
レモン水の氷が鳴った
白い帽子に閉じ込めた
蝶はどこへいったのか
太陽が真っすぐ降る
眩い断頭台から眺めていた
あの蝶の行方
自殺した詩人
現実を消去して残した虚構から
押し花のように抜け出して
初めてキスした人に
初めて殴られた少女の
鈍色のくちびるを掠めて染まった
途切れることのない「今」という
意識の連続を縫うように
火のように閃めきながら
蝸牛の入れ墨を越え
一斉に森が羽ばたく季節の手前
雨に串刺しにされた手紙のように
花嫁のベールは枯れ
喪に服す言葉の影法師たち
鼓膜から溺れて往く
上澄みの変ホ長
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