夏の囚われ人/ただのみきや
 
蝶の行方

レモン水の氷が鳴った
白い帽子に閉じ込めた
蝶はどこへいったのか

太陽が真っすぐ降る
眩い断頭台から眺めていた
あの蝶の行方

自殺した詩人
現実を消去して残した虚構から
押し花のように抜け出して

初めてキスした人に
初めて殴られた少女の
鈍色のくちびるを掠めて染まった

途切れることのない「今」という
意識の連続を縫うように
火のように閃めきながら

蝸牛の入れ墨を越え
一斉に森が羽ばたく季節の手前
雨に串刺しにされた手紙のように

花嫁のベールは枯れ
喪に服す言葉の影法師たち
鼓膜から溺れて往く

上澄みの変ホ長
[次のページ]
戻る   Point(2)