失点/ホロウ・シカエルボク
 
はそこそこ高かった、愛想のないやつばかりが住んでいた、でも散歩するにはいい立地だった、あのころ気に入っていた店はもう全部無くなってしまった、忌野清志郎が死んだ夜もこんな時間にこの道を歩いていた、事実だって思い出すたびに色を失くしていく、なのにどうして色の無い毎日を生きようなんて思えるだろう、スニーカーの靴音がアスファルトの層を突き抜けてマントルまで沈んでいくような気がした、俺は記号であり、君は記号であり、連中は記号に過ぎなかった、俺という記号は整列せずに歩いていた、君という記号はそんな俺を黙って眺めていた、連中という記号は列に並ばないものは気にも止めなかった、そうして町の夜は深くなっていく、閉じら
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