失点/ホロウ・シカエルボク
 
―ヘアーワックスも、香水も、汗の臭いも、煙草の臭いも、すべてが立小便の臭いに飲み込まれていく、セメントブロックの壁に描かれる染みのような存在、集結、目的のない儀式のように執拗に繰り返される、退屈にうつつを抜かしていると、快楽の指向性も同様になる、そして立小便の臭いだけが残る、ヘドロで埋め尽くされた川面のような営み、澱んで、どうにもならない、粘っこい泡が弾ける、思考が汚染された、不釣り合いなプライドだけが飛び交う田舎町、手の込んだ虫のような連中の繁殖によって築き上げられた歴史、冷蔵庫の裏側で見かける蠢きと大差無い、どぶ川では真黒い鯉みたいなでかい魚が数十匹とのた打ち回りながら近くを歩くやつらに向かっ
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