山国の車窓より 〜中央線沿線/道草次郎
 
ノさんという名前の50過ぎの統合失調症のおじさんがいた。この人はずいぶん面倒見のいい人らしく、他の利用者から何かと慕われていた。ぼくもその人から下の名前にちゃんを付けられ、ことある事に色々と世話を焼いてもらった。 シゲノさんはたいてい笑顔だったが、目だけはいつも笑っていない気がした。

それからタカハシさんという落ち着きのない30歳ぐらいの男の人がいて、この人はいつもシゲノさんと一緒に行動したがっていた。ある時、スタッフの人がタカハシさんのお母さんがシゲノさんに良い印象を持っていない事を暗にシゲノさんに示した事があった。それを聞いた時のシゲノさんの血走った眼と、その奥に宿る得体の知れない恐ろし
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