恵みと恵まれない日々/こたきひろし
 

その生活は殆どが自給自足
現金の収入はあったのか
なかったのか
栄養は偏ったものになって大人も子供も皆痩せていた

昭和三十年だった
私が産まれたのはその年の二月

勿論記憶は何もない
痛くも痒くもない

私は生後三年近くまで立って歩き出さなかったらしい
ずっとはいはいのままだったらしい
なのに
両親は一度も医者に見せたりしてもいなかったらしい

それはなにゆえに
答えを私は一度も両親に聞く事をゆるされなかった

三歳になって私は突然自立歩行を始めたらしい
奇跡が起きたらしい
自分でもなぜそうなったか
何も分からない

父親の葬儀の日に
叔母か
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