と/竜門勇気
 
するなんてのは
バカバカしい話だってことさ
いいやつだった彼は
糞が積み重なった棚を引き倒した


そして ぼくが悪魔だと言った
静電服がちぎれる音がするのを聞いていた
殴られて 殺されるのだと思って
覚悟の仕方を考えていた
「お前が私の母親をレイプした」
「お前が政府にほのめかし工作をして私の研究を台無しにした」
「どうして、妹が癌になったかわかるか、どうしてわかるのか」
彼はいいやつだった
彼が叫ぶたびに震えるまぶたからいいヤツの切れ端が飛んでくる
悪魔のメガネにその涙がぶつかるたびに
蛍光灯のやけに明るい光が虹を一瞬作って消える

ステンドグラスのような形
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