魔の清算 1(対話編)/アラガイs
音もなく頑丈な扉を開き、入ってきたのは見覚えのあるような皺だらけの中年男性だった。
署長自らが直々に連れて来たので位の高い人物なのだろう。署長は軽く会釈を済ませるとわたしを指さしてすぐに出て行った。
‥遅かったな‥
この一言が何を意味するのか。不穏な薄笑いを浮かべてわたしの前に座る。この男の横柄で不気味な態度から大凡性格的な察しは着いた。狭い部屋の中から逃げるように足下に這い出してきた虫。ぐしゃり‥と驚きもせずに平気で踏み潰せるという。まるで謀りごとのように結果を冷静に判断できる余裕と残忍性を持ち合わせたような男である。皺を曳きながらその細く吊り上がる目頭の奥に鋭く光るもの。一度喰らい
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