早贄/ただのみきや
も
母のサンダルは朝には濡れていた
前兆
鉄筋コンクリートの寺院
その鐘楼から
陰影を帯びた音韻が飛び立った
「不吉」 と書くことに
唇を押し当てて空気を踊らせるほどの躊躇いはない
一心に編んだ鎖帷子
何等かの畏怖を模った兜
外面(そとづら)の知的なアクセサリー
それらは理論的ではあっても呪術的でなく
己の中に潜むものからは守ってくれない
乾いた土が夕立を拒めないように
訪れる偶然のくすぐりが
遡っての予定調和を画策する
――さあ裏切りの準備を
かつて忌み嫌い
追放したものの死体が
中心から浮かび上って
その手があなたを
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