世界中のさよならの鐘をふたりで/ホロウ・シカエルボク
 
とが出来たら
今夜はどんな迷いもなく眠れるような気がして
一番下の段で潰れていたハエトリグモは
わたしの視線を疎ましく感じたかもしれません

ひとは嘘をつくとき
本当のように話します
だからわたしは
どうでもいいことばかり口にするようになりました
どうせそれは床に落ちるばかりなのです

『でもね、おれは
それをひとつひとつ
拾い集めて大事にとっておいたよ
それはどんな解決にもならないけれど
おれにとっては確かにやらなければならないことだったんだ
すでに諦めかけていたのではないかと言われたらそれまでだけどね』

空地に捨てられた
人の形に黒くカビたマットレス

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