「美道具」醜い器/アラガイs
 
屋には老婆が一人、二部屋ある小屋の方にはその親戚の一員らしい中年の夫婦が移り住みそこで働いていた。
一人暮らしの老婆は何をすることもなくその生活は謎である。年金で暮らしているのだろうか、身なりからして得体の知れない老婆の容貌ではあったが、話しをしてみればさほど気にするほどでもない。しかしわたしから見れば決して印象がよいとは言えない風貌の持ち主ではある。時折薄笑いに捩れる口元の皺と鈍く光を発する目線。この辺りでは見かけない暗い蔓柄のショールをひきづるように、O脚に開いた小幅で素早く歩く。それが顔の皺をいっそうと不気味にちらつかせ、酷く気にはなっていた。
ある晩わたしはいつものように洗濯場に向かう
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