「美道具」醜い器/アラガイs
 
ない。表には立ち入り禁止の札も括り付けられてある。誤って沼に落ちたその犠牲者の骸は永久に回収されることもない。これはずっと昔から言い伝えられてきた伝説であった。
そんなわけで、この地の少数の人々は規律を守りちゃんと迂回して歩いて行くのだが、ただ一人、この沼地を管理するわたしだけは例外の範疇だと手前勝手に解釈をしていた。深夜こっそりと洗濯に向かう。できるだけ廻りには気づかれないように、人々が寝入るそのときを見計らって出向いていく。眠気を我慢するのだ。それくらい気を使うのは、この禁則を犯す行為からして当然だろう。

沼地に沿って左手側にある養鶏場の番屋には新しい住人が移り住んでいた。小さな小屋に
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