「美道具」醜い器/アラガイs
 

小市民である人々が規律を破るのは致し方ないことである。全体に及ぼす規律の影響よりも、あくまでも個人の利得を優先させたいのである。そのような過ちを繰り返すことによって処罰もまた厳格化されるのであろう。 器に貼られた禁句。その中身を腐らせてはならないのだ。  by 多児真晴


すぐ脇にある共同の洗濯場に通うのには1マイルほど鉄線に沿って歩いて行かなければならない。なぜならばその有刺鉄線の囲いの中は底の深い危険な沼地だからだ。ただ扉がある場所に鍵は掛かっていなかった。中の茂みに入ればそこには幅3メートルほどの距離を渡るための板がそっと立て掛けられてある。もちろん普段から板は掛けられてはいない
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