頭の上にかもめが落ちて来る/ただのみきや
はできない
このまま目を瞑り信じてさえいれば
信じてさえいればそれが真実なのだ――
ついに彼は自分の目蓋を糸と針で縫い付ける
愛と安らぎ 常闇こそがそれを保障するもの
そういう訳で今日もその膝には彼女ではない
別の猫がごろごろ喉を鳴らしている
山姫の遺言
名前を付けてあげて
カゲロウの翅で透かした満月色の
発するとトルコ石の指輪が柄杓の水に落ちたよう
朝露が瞼に落ちてキュッと閉じた時の
松葉の香りにちょっと似た
それでいてひとり風の中で感じる寂しさのような
名前を付けてあげて
五感六感の呼ばれるままに
この世界から柔らかな舌で掘り出して
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