頭の上にかもめが落ちて来る/ただのみきや
して
からだを与えてあげて
生まれた友達や恋人は
双子のような分身変化
時を経て
翅も丈夫に乾いた頃
どこか見えないところで鳴いて
呼んでくれるでしょう
まだ耳にしたことのない
懐かしい名前
初めて知るでしょう
創作したものの中に
本当のあなたが隠れていて
あなたをあなたへ誘うことを
やがてあなたはひとつになって
永い蛹を終えて羽化するように
からだも捨てて往くでしょう
言葉も殻のように置き去りして
だから今はただ
名前を付けてあげて
からだを与えてあげて
蜘蛛のように織り上げて
朝露に濡れて息絶える青い蛾のような
震える心臓を宿らせて
《2020年6月27日》
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