頭の上にかもめが落ちて来る/ただのみきや
 
たきを捧げます
一瞬だって見失いたくないからそう言ったのに
彼女はまばたきの時だけ存在するようになって
以来一度も彼女を見ていない――

彼は覚悟を決めて目隠しをして暮らすことにした
なにもかもが手探りの
小さな事柄一つ一つに躓く毎日
それでも彼女を側に感じて幸せだった
だがある時ふと 疑いが生じ
それは丸太みたいに大きくなって
心は軋み始めた

――今わたしが手探りで愛しているのは
本当に 彼女だろうか
わたしは別の誰かをそう思い込み
抱いたり撫でたりキスしたり
だとしたら どうしよう
目隠しをとって確かめようか
いいや もう遅すぎる
恐くてそんなことはで
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