独白は灯りの真下を避けて/ホロウ・シカエルボク
 
になってしまう、たいていの過去はそんなふうに脳裏に植えつけられるシステムになっている、おなじことがらが語る人間によってまったくべつの話みたいに聞えてしまうのは、そのせいだ、結局のところ、知ることが出来るのはいまだけなのだ、そしてそれもあっというまに、知ったことによって形を変えてしまう、ああ、なんてあいまいなものばかりを信じていかなければならないのか、おれは記憶を嫌悪する、忘れてしまいたいものほど強く植え付けられてしまう、印象がすべてだからだ、つよい光のほうが写真が美しく撮れるのとおなじことだ、だからおれはすべてのものと距離を置いた、余計なものを排除したほうが面倒が少なくて済む、それでなくてもおれの
[次のページ]
戻る   Point(1)