一晩中娘道成寺を見ていた/ただのみきや
 
な垂れながらも這い上ろうか
かつて粋と呼ばれたものを想う
わたしの知らない知れない世界
ふと 匂うように




頭で椰子の実を割る男

瞳には海を乗せ
耳には翼の幽霊を飼う
そうして口は閉じたまま
生贄の子どもで封印して
発語する度に一人殺す
地獄も天国も朝飯前
全てが方便の大道芸
稼ぎはすっからかん
足を止める者もいない
小銭を入れてほしいとは思っていない
芸をしている自分が好きなだけだ

秘密へ潜って息が続かずに
わたしは岩の上の人魚に「危ない! 」と叫んだ
だが間にあわないパイナップルが顔面を直撃する
飛行機から誰かが飛び降りる

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