一晩中娘道成寺を見ていた/ただのみきや
良かった
剥いても皮ばかりで中身がなくたって
その皮が食べれるのだから問題はない
だけど剥いても剥いても中身のない話
ましてや犬も食わないような話
剥きながら本人涙を流してする話は
野暮天
白雲に覆われた山脈
そこから一列に近づいて来る
送電塔の下 繁る叢に
どこから飛んで来たか
朝顔が蔓を這わせている
うす桃色の花房をひとつふたつ
霧雨に濡れた姿はなよやかで
はかなげにも見えるが
ただ己のために項も白く
毒もなければ棘もない
容易く手折られて
手折られても美しい したたかに
ただ己のために
雷を担いだ鉄の巨人の足元にまで
しな垂
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