目隠しの奇想曲/ホロウ・シカエルボク
 
い出が死に絶えている
さなぎを破れなかった虚弱な蝶のように
肉体と違ってにおいを立てられないから
いとも簡単に忘れ去られてしまうのです
もうなにもなくなっているかもしれないけれど
ひとつひとつ割ってみるのも悪い話じゃない
なにも思い出せなかったとしても
それはわずかに目の前に立ち込めた霧を晴らすはずだから

置時計が静かに
私たちが生きていることを話している
いけすかない単調なリズムで(このもの言いはフェアーじゃない)
それは詩や音楽にはなり得ないけれど
でも確かにひとつの
世界の証にはなるはずでしょう

見て、カーテンのところで素敵な蛾が泳いでいる
あの子はきっ
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