子守歌は静寂の雑踏のなかで/ホロウ・シカエルボク
せせらぎは忘却のように消え失せてしまった、もう、おまえは、地に落ちた果物みたいにいびつで惨めなしろものだ、指先が震えているのは、根源的なおそれのせい、途方もない量の雨が世界に飛び降りてくる、人々の寝息が呪いのように首もとにしがみついて…もしもはっきりとした悪夢とでも呼べそうなものがすぐそばに在るなら、そのほうがずっとましだとおまえは考えるだろう、けれど、生命の領域に関わるものごとには選択肢など存在しえない、たったひとつのピースを拾い続けるしかない、おかげでおまえの右手は、人差し指と親指だけが摩耗してぼろぼろだ、まるで塩酸のなかに浸かりでもしたみたいに…叫びと呼べるようなものはもうない、そんな段
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