六月酔歌/ただのみきや
 
も化粧もBGMもいらない
太陽と風の演出で
美女たちは素顔のまま無言でお喋り

見つめて愛でて酔いしれるのに
チケットはいらない
六月は粋な興行主

享楽は哲学に勝り色香は博識を制する
肉体という感覚世界に暮らす限り
永続するものは消え去るものの魅力に敵わない



 *
理屈でたたみかけて
すぐにでも眠れるように
でもすっかり発散した後に
ロザリオみたいに爪繰らないで
わたしは聖母じゃないから

あなたの口からもれる
「不条理」という言葉の曖昧さ
ただ眺めて暮らしたい
美しいものには必ず
悲しさや空しさ
不幸や孤独
そうして死が伴っている

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