愚かさの取り分/ホロウ・シカエルボク
ったように笑う
「散らかしちゃってすまないね」と俺は彼に詫びる、バーテンは黙って首を横に振る
「お代は結構です、その男が目を覚ます前にお帰り願えませんか」わかった、と俺は答える
雨はずいぶんと大人しくなっていた、酔いを醒ますのにちょうどいいくらいの雨だ
店から少し離れたところでドアの開く音が聞こえ、さっきの男が何かを叫んでいる
「待てよ、てめえ」俺はバイバーイと茶目っ気のある仕草をして、一番近い路地へ駆け込む
男が物凄い靴音を立てながらこちらへ向かって走ってくる、殺してやるとか言っている
この路地は入ってすぐに隠れるのに持ってこいの窪みがある、俺はそこへ隠れて
男の影が見えたタイミ
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