帰郷/ただのみきや
いくつもいくつ
も胡桃や楢の実をぶつけてみた。「父さん、あなたとセック
スしなくて本当によかった。」
僕は君という耳なりと棘を今も身に引き受けたままだ。あ
の日の祈りは雨に包まれて瞑ったきり。
《いつまでも一緒》そんな約束を仕舞った小箱を一本の並木
の根元に埋めて、その幹にナイフで印を付けた――それより
前に鳥の翼を片方切り取って土に埋めたことがあった。何年
か後に掘り返せばきっととても緻密な白い骨組みが見られる
だろうと思ったのだ。僕はそれを奇麗に磨いて壁に飾るつも
りでいたがすっかり埋めたことを忘れてしまい、思い出した
時には埋めた場所が解らなくなっていた――もうあ
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