帰郷/ただのみきや
続ける男は小児愛
者で会社員でマルクス主義者で修験者でパチンコ依存症で小
説家志望で特攻隊の生き残りで占い師で指圧師で馴染みのホ
ステスを嫉妬からカラオケマイクのコードで絞殺したまま家
族になど目もくれず入山した一筆書きの蚯蚓だった。
――こうして書いてみると僕がいかに不在の父を憎み、また
慕いもしていたかが解るというものだ。今も下腹部に血の滲
むような痛みが走る。
僕は登山道から笹深い斜面に入り山奥の遊園地へ父に会い
に行く。樹齢数百年もありそうな巨木に囲まれて苔生した岩
が並ぶところ、蔓に絡まった白骨がぶら下がっていた。すっ
かり乾いていてすこぶる機嫌のよい表情だ。いく
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