恋昇り10「雨の夜」/トビラ
える。
「ああ、だな」
そう言って、菜良雲君は納得したように笑う。
午前十時。
私と山藍さんは、準備を整えて、ホテルを出る。
空は強烈な晴れ。
熱気が街を覆って、私たちは蒸し上げられるよう。
「じゃあ、行こうか」
山藍さんは、そう言って、すらっと伸びた足を外へ向ける。
一理はやっぱり奇妙なほどに気にかかるところがない。
「気味が悪いね」
山藍さんの言葉に頷く。
二理。
二理は一理とは違って、雑多な街の雰囲気がある。
ここは、普通に気持ちが悪い。
「ここは普通だね」
山藍さんの言葉に頷く。
三理。
三理も奇妙なほど気にかかることがない。
[次のページ]
戻る 編 削 Point(0)