恋昇り10「雨の夜」/トビラ
雨も降るかもしれないみたいだから、外は気をつけて』
『まあ、そっちは菜良雲君もいるから平気だね』
『そうだぜ、山藍さん。今度は俺と一緒に行こうよ』
ここで通信を切る。
「今、菜良雲君、きっと『くぅー』って言ってるね」
「言わせておけばいいよ」
そう言って私たちは笑う。
七理。
七理は普通。
八理。
ハ理に向かう路面電車の中で雨が降ってくる。
ハ理は痕跡が消されている。
九理。
夜九時。
九理は普通。
結局、痕跡を消されていたのは、一理、三理、五理、六理、八理。
夜十時。
ホテルへの帰り道。
雨脚が強くなっていく。
ホテルまで後、ほんの少し
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