恋昇り10「雨の夜」/トビラ
 
少し。
コンビニが、ぽおっと、光ってる。
「エナちゃん、私、ちょっとコンビニに寄って行くね。何かほしいものある?」
「バニラアイス食べたい」
「じゃあ、みんなの分も買っていくね」
エナちゃんと手を振り合って、私はコンビニに入る。

かろやかなチャイムを鳴らし自動ドアが開く。
コンビニの中は特に音楽も流れてなくて、雨音が響く。
みんなのアイスを一つ一つ選んで、レジに持っていく。
それにしても、一体、なんの痕跡が消されていたんだろう?
連座君なら、わかるだろうか?
私としても一つ予想はある。
それを話し合ってみよう。

会計をすませ、にこやかな店員さんとふと目が合う。
思うより先に、言葉が出る。

「あなた【密】の人ですよね?」

「素晴らしい」
そう言って、店員さん、いや、店員さんだった人は笑う。
そこには、もうにこやかなコンビニの店員さんはいない。
私が今まで会ったことのない、異質な雰囲気を放つ誰かがいるだけだ。



続く
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