恋昇り6「明日の朝またおはようと言うために」/トビラ
 

「そういう感じが何もなかった。九理の華区は昔からある街だよね。それなのに、新しくオープンした商業施設みたいな薄っぺらさって言ったらいいのかな。とって付けたような、今さっき、切って貼ったような無機質さと言ったらいいのかな。つるっとした陶器みたいなザラつきの無さ」
「ああ、そうか、なるほど」
「なんかわかったか?」
「ああ、いや、わかったというほどじゃないけど、ちょっと腑に落ちたな」
菜良雲と私は連座の言葉を待つ。
「俺もその違和感は感じてたんだ。因果列行から、ここまで何もなかった。それ自体はいいことだし、何もないことに越したことはないから、そのままにしていたけど。いや、違うな。うまく言語
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