流刑者の楽園/ただのみきや
海に積もった雲は濃淡を寄せ集め
陰気な紫陽花の花首となる
風は追い抜いて置き去って
時は何食わぬ顔で削っている
太陽が石を抱いている
カナヘビも石を抱いている
抱いているようで抱かれてもいた
石からは何も生まれなかったが
生きていると信じていた
信じるとは夢を見ることだった
水草に覆われて
ゆるやかに縫うように流れ
見つめれば
瞬きしながら震えている
顔を寄せ
アメンボの水琴に欹てる
遠く 鶯の美しい嫉妬
女の中で宝石が凍えている
春の虚言にスカートを釣鐘にして
飲み干したチューリップの空洞は
思いのほか苦く陰気な性欲だっ
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