流刑者の楽園/ただのみきや
だった
足元から蛇のように細り
ことばは水気を失い舌にこびりついたまま離れない
目や耳を付け替えてみたが無駄だった
植木鉢には何年も前の土と枯れた根が固まっている
反り返った胸に芽吹く若草色の狂気
夕陽を包む霧の肌
ふくよかな腰に埋もれた大理石の神殿
満ちては欠け
欠けては満ち
生贄の血は小川となった
祈りの鋏は欲望を具象へと切り抜いて見せる
生まれつき触覚を持っていない
調和と能力に欠いていた蟻たち
父も母もなく
果実のようにわたしの洞に生り
飢えて泣く不具の赤子
わたしはそれをもぎ取って食わねばならない
そうして快楽と苦痛の
肯定と否定のゼロコンマの明滅
壜から壜へと移し替えられる刹那の遊離
没する太陽 黒焦げの時間
永遠の赤子 黒焦げの爪が降って来る
主人を求める飼い犬たちよ
鼻を鳴らして掘り返すな
埋まっているのは意味じゃなく記号だ
おまえたちの好む饐えた肉はそこにはない
《2020年5月9日》
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