壊疽した旅行者 五/ただのみきや
 
離れても影響し合い
星々は時に滅ぼし合う
美しい独りよがりたちの
素顔は氷や石
時にガスでしかない
だから隕石のように今ここに在る
人々ではなくひとりの人が
孤独な真空を懐かしがることすら
論じるには言葉は次元を一つ欠き
最も遠い落日に
背中合わせに旅立った亀とは
巡り合うことはない
石を枕に眠る者に天の梯子が
再び降りることがないのと同じように
そう言ってラジオはこと切れた
風の中のノイズ
あの歓喜と愛嬌は
賽の河原を往く蝶だったか
時以前
だれかが釘を打った
なにもないところに音だけが響き
すべては一つの痛点から始まった




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