壊疽した旅行者 五/ただのみきや
 
絹のように捲られる
踏み荒らされた庭先で
光が嬲るうなだれた
項(うなじ)の白さ視姦して




求痛者

見ることを拒み瞼に潜り込んだ
このまま光に埋もれて木乃伊(ミイラ)になって
時間は広大な流刑地
あれこれ行き巡ってもたかだか数歩でも
どこかで野垂れ死ぬ座標が違うだけ
ラジオが何か言いたげだ
アンテナを張り伸ばしチューナーも細心
足下には澄んだ夜が流れていた
群れても孤独な動物もいる
一人になっても群れから抜けられない動物も
聞くことを拒み耳へ詰め込んだ
銃弾は冷たく沈み
記憶を溶解する海は
慈愛に満ちたスープだった
遠く離れ
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