壊疽した旅行者 四/ただのみきや
ちに分け与えられる
顔は若返ることはあっても老いることはない
言葉や表情が幸福に彩られても
いつも一抹の痛みを添えて差し出される
わたしたちはもう幽霊は望めない
あずまやで耳を澄ますより
情報の餌台で押し合い圧し合い噂で猜疑心を肥やす
死者を数える時 顔がない
不安が塞ぎ悲しみが入れない
批判と美談 どちらが酒でどちらが肴か
巫女の系譜
随分と追って追い詰めて
一枚の絵から破れ出たもの
やはり女の姿か
巫女であり芸能者
時代を越えて現れる
向こうと此方を繋ぐ ものぐるいの身体表現者
創作編集された歴史と
漆器の如く艶
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