壊疽した旅行者 三/ただのみきや
 
雪の開(はだ)けた土手
笹だけが青く見送っていた

誕生と共に
いのちは死を身ごもっている
ゆえに
あどけなくあざとい
食し食され
集められ束ねられ
太い流れとなって
暗渠を越え
源の海へ回帰する
そんな
夢想の果ての朧に縋りながら
いのちの流れ 死の流れ
ひとつの流れ

雪解け水が河床を駆ける
一つの流れの同じ煌めきが
同じ水であることはない


  (*一部分ロルカとボルヘスに詩想を借りて)




わたしの蝶

モンシロチョウを見る前に
クジャクチョウを見る年がある
寒の戻りが必ずある
幻の春の日に
夏には開いてと
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