壊疽した旅行者 三/ただのみきや
 
てとまる翅を
コートの襟まで立てるように
 だから今日
レンガ塀の向こう舞い上がった枯葉を
大きな蝶に見間違えたとしても
そのままにしておこう
――詩の中の
まだ少し寒い眼差しに
広がる丘陵 若葉一つない林
雪解け水の勇んだ響き
夏のようにはね返しはしない
秋のように吸い込もうとしない
淡くゆらいだ青空を
アゲハチョウほどもある枯葉色
蘇り 二度と死ぬことのない
         わたしの蝶を




               《2020年4月5日》







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