壊疽した旅行者 三/ただのみきや
 

いまだ未体験の――
心待ちにしているようだ
自分のそれに関しては




樹木から想う

樹木は太陽の礼拝者
風に欹て一心に空を探る
何かを掴み取ろうとして
灰色のすらりとした腕が
俄(にわ)かに焦げ茶を帯びて来る
新芽が膨らんでいる
遠くない未来
薄緑色の若葉が一斉に萌え出(い)で
瑞々しいいのちの光沢を
あたたかい風に閃かせる
やがて来る嵐に
激しく震え 身悶えし
巡る季節に姿を変えながら
再び黒々とした血管となって
生を固く内に秘めたまま
死に疑似した白装束

 果たしてそうか

樹木は絶えず闇に根差し
光も風も
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