壊疽した旅行者 三/ただのみきや
る朝に
文句を言うのは生者だけ
誕生は不平等をもたらし
死は平等をもたらす
誕生は祝われ
死は嘆かれる
死者が生者を見つめるのも
生者が死者を見つめるのも
生者の想像の域を出ず
追悼も悲しみも誉れも
こちら側のこと
生のこちら側で
死について
死の先伸ばしについて
死後について
想い巡らし
こちら側の特権で
恐れや不安
傲りに誇り
嘆き悲しみ
悟りや信仰
大見え切って宣いもすれば
徒然なるままに書いてもみる
日々刻々一秒ごと
近づいている現実
いつかは知れない
薄皮一枚までも
完結の結末の文末の
生涯で一度切りの
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