壊疽した旅行者 ニ/ただのみきや
 
らか子どもたちは石への興味を失くし
もっぱら話題は金儲けと異性のこと
酒を飲みながら子どもの頃の話などすると鼻で笑う
それが年相応のやり方だったのだろう

あれから数十年が過ぎた
わたしは今も石を持ち歩いている
相変わらずの不格好な石を
「この碧い沈黙は
時を止めた悲しみの叫び
湖の冷たい底に眠ったまま
どうか掌で温めて
愛の記憶が蓮のように還るまで 」
人の心の隙間に入り込み
幾らか金を恵んでもらう
ある者はわたしを石ころ詩人と呼び
ある者はわたしを石ころ詐欺師と呼ぶ
わたしは石ころ遊びがやめられず
あの日の嫉妬を抱えたまま
子どものまま老いてしまった

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