壊疽した旅行者 ニ/ただのみきや
葉を失った
彼の石の兵隊は本当に兵隊で
巧みな細工で石が刻まれていたのだ
彼の父は宝飾を主とする優れた石加工の職人で
その子の持つ石の獅子は鬣のある本物だったし
神話の神々にはちゃんと目鼻があり衣服もあった
以来わたしたちの石は単なる石ころになった
もはや何の形にも見えない
どこにでもある不格好な石
すっかり技巧の魔性に心を奪われた子どもたちは
それを真似て石に鑿を当ててみたり
親にねだったりもした
技巧を習おうとする子さえもいたが
すぐに諦めてしまった
簡単に身に付くものではないし努力しても
皆同じに会得できるわけではない才能や資質もあった
いつの頃からか
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