かすかな朝焼けとホオジロの声/山人
 
ロのリードを引く。シロは私の悪癖を黙って身じろぎせずに立っていたと記憶している。このように、シロを前に私は自らの失敗やあり得ない未来に対し弁舌した。その間、シロは私のステージの横にいつも座り、私の演じ方を黙り、見ることもなくただ佇んでいたのだった。
 シロが居なくなっても散歩は可能な筈だったが、よく考えてみると何かが足りないという事に気づいた。それは、右手でいつも引いていたリードがないという事だった。シロが速度を上げれば、それを制御するためにある程度の腕力が必要とされたし、シロが私の体をわずかに引っ張ることから右半身体勢が常に維持されていたことに気づく。シロとの散歩はそのように、体のバランスが崩
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