かすかな朝焼けとホオジロの声/山人
た我に返り歩を進め私のリードの先を歩いていたのだ。シロにはずっと本音を言い愚痴をこぼすのもシロだけだった。私がなにか言葉を発するとシロは反応し私の顔を見るが、それは一瞥という行為でしかなく、またシロは意味のない無益な猟欲のためにまわりに視線を向けるのだった。シロとの一方的な会話のやり取りの合間に景色は流れ、大きな杉の大木の横にたどり着く。そこで、その木を伐採するという状況を設定し、私は施主に対して施工方法を演じ始めるという行為を好んだ。直径七〇センチを超えた杉の木を道路側に伐採すればいいのか、それともすぐ傍の川の側面に倒せばいいのか。私は施主を想定し演じ切り、説明を終えたところで私は我に返りシロの
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