Birthday Cake/ツチヤタカユキ
に重力がかかる。アスファルトとの摩擦で、タイヤのゴムが焦げつく音がする。
二人を乗せた車は、アクセル全開で、赤信号を無視して突っ切った。
シオンは、バックミラーで、後方を確認する。パトカーが、背後を陣取っている。その現実に、目を背けてしまいたくなる。振り返りたくもないと思うのは、シオンの過去と同じ。
大量の汗で、シャツが車のシートに張り付くのが、分かる。
メーターは、100キロを振り切れる。
サイドガラスに映る景色が、高速で後ろに吹っ飛んでいく。
その時、シオンにはパトカーのサイレンが、赤ん坊が生まれた時にあげる、産声のように聞こえた。
明日になれば、何事もなかったかのよ
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