Birthday Cake/ツチヤタカユキ
 
ても履き続けている。
生まれた時から居なかった父親。
そして、母親までもが、一年前から帰ってこなくなった。
それ以来、シオンは、ずっと心臓の上に、スコールが降ってるような感じがした。
そのスコールは、トイレットペーパーの塊が、水に溶けて消えていくように、絶望を心の中で、ゆっくりと溶かしていった。

街は眠っている。筆圧の濃い夜の闇。
その上を、能天気そうに月が浮かんでいる。
シオンには、夜の暗闇が、汚れた雑巾を絞った時に出る、どす黒い水のように見えた。


真夜中の国道は、車がほとんど走ってない。
レンが、後部座席に乗り込むと、シオンは、乱暴にエンジンをかける。二人の体に重
[次のページ]
戻る   Point(2)