Birthday Cake/ツチヤタカユキ
 

人間の卑しい表情を、今まで、どれくらい見てきたんだろ?とシオンは、ふと思う。

「69、70、71、72・・・」

遠くの方から、パトカーのサイレンが聞こえた。
その音は、静まり返る世界の静けさを破る。早過ぎる警察の登場。
これには、いつも冷静なシオンも、冷や汗をかいた。


「走れ!」
札束をバッグに突っ込んだシオンは、そう言うと、路肩に駐車した車の方へと走った。
レンも、それを追いかける。
1秒間が、永遠のように感じる。
車に乗り込んだシオンの目に、レンのスニーカーの靴ひもが、ほどけているのが見えた。
まだ母親が居た頃に、買ってもらった靴を、ボロボロになっても
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