Birthday Cake/ツチヤタカユキ
 
を流しながら、描いたようなレンの絵だった。
剃刀で世界を削ったかのような、鋭角な線に、塗られた絵の具は、シオンが垂らした血液のようだった。
人間の中にある37兆個の細胞を、全て集めてそこに再現したような、繊細な色彩。
「レンが生きてる」
ルカは、その絵を見て、膝から崩れ落ちて、割れた卵から、垂れてくる卵黄のような、大粒の涙を流した。
レンが、すぐそこに居て、絵の中で呼吸している。
ルカの心の中の、欠けていたパズルのピースの隙間を埋める。
涙腺の中で揺れる視界は、絵の中のレンを水族館の中に居る魚のように、揺らし続けた。
ルカは、その絵を生涯、捨てる事は無かった。
それは、シオンが、
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