Birthday Cake/ツチヤタカユキ
息が上手く吸えない日。
待合室は、妊婦でいっぱいだった。
無愛想な医者は、今まで、幾度となく、こんなシーンに出くわして来たであろう、冷たい機械のような作業で、ルカに堕胎手術を施した。
数日後、葬儀が行われ、産まれ損なった命は、半分の大きさに切断された、棺桶に入れられた。
ルカは、身体は軽くなったけど、心は重たくて、潰れてしまいそうになった。
ついこの間まで、胎児が居た場所に、空白が出来て、そこに入り込んだ絶望は、触れてみると人肌だった。
葬儀中、後藤はルカにかける言葉が見つからなくて、無言で横に寄り添っていた。
近くで見ると、後藤の口周りには、うっすらと青い髭が生えていて、
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