Birthday Cake/ツチヤタカユキ
んなにドキドキしたのに、今ではもう何も感じない。心が不感症になっていく感じ。
金庫をハンマーで破壊するたびに、シオンは、思った。
この金庫のように、壊れた物は、もう一生元どおりにはならない。人間も同じ。
そこらから先は、壊れたままどうやって生きていくかを、考えるしかない。
いつも犯行現場に、何かを置き去りにしてるような感覚に陥った。
奪う代わりに、何かを失ってるような感覚。
金庫を開けた時の、ギィーっていう音は、福沢諭吉の金切り声に聞こえる。
金を奪った帰り道。
車の運転をしながら、門脇が口を開く。
「俺、さっき幽霊見たかも」
シオンは、『また始まったよ』という表情
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