羽根のように/岡部淳太郎
 


羽根のような思いが
それぞれの人の口から呼気のように吐き出されて
それらの思いの巷が
あちらにもこちらにも出来上がっていて
そうして世界はつくられていた
世界の重さと
人それぞれの
あまりの軽さが釣り合いをとって
この広がる空の下にあった

羽根のような思いを
次々に吐きだすことで人々は生きていた
そうやって歴史はつくられ
それぞれの人生もつくられていた
けれど 舞い上がっても落下してしまう思いもあって
羽根から翼のかたちになれずに
踏みつぶされてしまっていた
それらの落ちた羽根も
あるものは拾われ
あるものは拾われずにそこにあって
それでも次の思いは
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