行方知れずの抒情 四/ただのみきや
ここに在る!
記憶の中の消火栓は赤だけど
この街の消火栓は黄色がほとんど
隣の港町では水色のものが多い
もし赤が火や火事を連想させるためなら
それは消火栓の存在意義を表しているのだろう
もし青が水や貯水池を表現しているのなら
それは消火栓という存在の本質を表しているのだろう
もし黄色がただ緊急時によく目立つためだとしたら
とにもかくにも 「――ここに在る! 」自己主張
「自分は何者であり 何のために存在しているか 」
そんな問いに対して
一日の時間の多くを頭の中で過ごしている人たちは言う
「つまるところ そんなものは無い 幻想なのだ 」
[次のページ]
戻る 編 削 Point(3)